シンガポールは新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受けた最初の国の一つでした。在宅勤務のための奨励金、チャットボットおよび市民に情報を伝えるWhatsAppチャンネルを含む国の初期対応は、世界保健機関(WHO)や科学的研究の観点からも称賛を得ています。
新型コロナウイルスへの対応は、シンガポールの大規模なデジタル・トランスフォーメーションのきっかけであった「シンガポール・スマート・ネーション・イニシアチブ」の2014年開始以来加速している流れが大きく寄与しました。シンガポールのデジタル施策は、ウイルス流行の4つの段階:監視、予防と封じ込め、診断、および治療すべてに対処することに繋がったのです。
デジタル署名
疾病監視とは、感染源を特定することです。シンガポールでは、デジタル技術を活用した広範な接触者追跡システムを政府が採用しました。 新型コロナウイルス感染者とその接触者を特定するために「デジタル署名」、つまり現金の引き出しやカード支払いなど、日常生活の中で私たちが残したテクノロジー関連の痕跡が追跡されています。ただし、そのような監視は説明責任と透明性へのコミットメントに基づいて行う必要があります。
確認された症例の地理的および人口統計学的データも、パニックを抑制し、ウイルス感染へのリスクがあると思われる人々が医療サービスを求めることを奨励するためにオンラインで公開されます。
広範な監視が常に成功するとは限りません。したがってこれ以上の感染蔓延を防ぐためには、感染を封じ込める必要もあります。
シンガポールでは公衆衛生を改善するためにさまざまなデジタル技術を導入しています。これには、オンラインツールを使用して、政府が生産したサージカルマスク(MaskGoWhere)を配布する場所に市民を誘導することや、呼吸器疾患に強い医療施設(FluGoWhere)を紹介することなどが含まれます。これら2つのウェブサイトは、わずか数日で140万を超える閲覧者数を記録しました。
新型コロナウイルス関連の問い合わせへの対応
シンガポール版WhatsAppチャンネルには63万人以上の購読者がおり、市民や企業向けのチャットボットは75,000以上の新型コロナウイルス関連の照会に回答しています。また、政府は人々が隔離期間に自宅にいることを保証するために、SMSおよびWebベースのプラットフォームの使用を義務付けています。
テクノロジーは新型コロナウイルスの診断において重要な役割を果たしてきました。同時での温度測定可能量を劇的に増加させるAIスマートフォン温度チェッカーの試運転は、数日後には主要な公共エリアでの大規模試験に移行しました。
政府はまた、検査時間を短縮し、空港などの優先エリアで疑わしい症例の検査を可能にする独自の核酸検査キットを開発するための研究開発にも着手しました。また、コミュニケーションは特に誤情報拡散に対する取り組みにおいて重要でした。
短期及び長期の対応
シンガポールの新型コロナウイルス治療の取り組みは、短期と長期に分けることができます。
短期的な側面では、シンガポールは即座に効果的な治療オプションとしての新薬や潜在的ワクチン候補などの研究に取りかかりました。これらの取り組みは、国連開発計画(UNDP)技術・革新・持続可能な開発のためのグローバルセンター(UNDP Global Centre for Technology, Innovation and Sustainable Development: UNDP GCTISD)のパートナーであるSGInnovateが推進する戦略であるディープテック(最先端の研究成果)における世界のリーダーになるという目標と一致しています。
長期的には、政府は新型コロナウイルスがもたらす社会的影響への対策にも取り組んでいます。これには、製造業やサービス業における雇用制限の緩和や、特にこの疫病の影響を受けるセクターでの新たな技術の取り入れやスキル強化が含まれます。例えば、パニックが助長する買い占めを阻止するために、パックマン風のオンラインゲームが開発されました。
世界的な影響
シンガポールのスマート・ネーション・プログラム・オフィスと提携して、同国における対策計画の基礎と、世界中におけるUNDPの活動の潜在的な影響について理解を深めています。
これらリアルタイムの教訓は、特にパンデミックに伴って世界の疾病対応策を形成し続けるでしょう。
科学的研究によると、もし全ての国がシンガポールのようなアプローチをとっていれば、潜在的には2.8倍の新型コロナウイルス症例が世界中で確認されていた可能性があり、それが故にウイルスへの対処もより適切に管理できたことが示唆されました。
シンガポールの対策は、堅牢なデジタル基盤に基づいて構築されました。それはまた、人々、スタートアップ企業、様々な機関のたゆまぬ努力によって推進されてきました。テクノロジーはいかなる状況でも万能薬ではありません。しかし、戦略的に活用することで人間の才能、献身、リーダーシップを促進することができるのです。このようなアプローチは、各国が新型コロナウイルスへの対策を続けるにあたって、また将来的には他の世界的な課題への対策においても参考にすべきです。