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COP28:気候変動への軌道修正となるか
2023年11月30日
海面上昇に対応するため、沿岸沿いにある都市が水上浮遊居住区を建設している様子を思い浮かべて見てください。あるいは、壊滅的な干ばつにより、財産や思い出を捨てて家を逃げ出さなければならないことを想像してみてください。
これらは仮定のシナリオではなく、私たちが今向き合っている現実であり、気候危機によってもたらされているのです。思い返してみてください。 2022年は記録的に暑い年でした。それ以前の7年間もそうでした。
この厳しい現実を直視することが、COPの重要性を強調しているのです。
COPとは
UNDPが制作したClimate Dictionaryでは、以下のように説明しています。
気候変動枠組条約(UNFCCC)の下で1995年から年次開催されている気候変動に特化した国連会議で、「締約国会議」または「COP」と呼ばれています。
COPとは「気候変動枠組条約締約国会議」の略語で、「締約国」とは条約に署名した198カ国を指します。毎年開催されるこの会議の重要性は、気候変動との闘いにおいて世界的な合意に達し、気候変動対策を推進するための法的拘束力のある合意を形成する主要な場であるという、そのユニークな性質に由来します。
今年で28回目を迎えるこの会議。COP28は、アラブ首長国連邦のドバイで11月30日から12月12日まで開催されます。 これまでに、先進国にとって初の法的拘束力のある排出削減目標を導入した京都議定書や、途上国における気候変動への適応・緩和プロジェクトのための重要な資金調達メカニズムである緑の気候基金 (Green Climate Fund)など、重要なマイルストーンが生み出されてきました。
最も注視すべきは、COP21で各国が画期的なパリ協定を採択し、地球温暖化を産業革命以前の水準から2℃未満に抑制し、さらに1.5℃に抑制する努力を追求することを約束したことです。同協定は、温室効果ガスの排出削減と気候変動の影響への適応にどのように貢献するかを明確にすることを各締約国に求める「国内決定貢献(NDC)」を定めました。
その他の大きな成果としては、COP25で合意されたジェンダー行動計画があり、ジェンダーに対応した気候政策の必要性が強調されました。また、COP27では、気候変動による不可逆的な影響に対処するための「損失と損害」の基金を設立することが決定されました。
COP28の議題とは
COP28では、政府代表、科学者、国際機関、企業、先住民、地域社会、青少年、メディア、市民社会、そしてフランシスコ法王、シャンマ・アル・マズルイ氏、イギリス国王チャールズ3世といった影響力のある人物が、一連の会議やイベントに参加を予定しています。
COP28は、気候変動対策の進捗状況を評価するために5年ごとに行われる初めてのグローバル・ストックテイク(GST)の終了を意味します。この成果は、各国が2025年に期限を迎える修正NDCを作成する際の指針となり、どのように気候変動対策を強化するつもりかを概説することになるのです。
今こそ軌道修正の時
実際、GSTにより世界が軌道から外れていることを示されることは、すでに分かっています。地表の平均気温は、1800年代後半に比べすでに1.1℃上昇しており、1.5℃のしきい値に近づきつつあります。世界気象機関(WMO)によれば、世界の気温は2023年に世界各地で過去最高を記録し、今後5年間で新記録を更新すると示唆されています。
気候危機は様々な次元において人権問題であり、COP28でもこの問題に焦点が当てられます。 気候危機は、より貧しく脆弱な国々、つまり気候変動への貢献度が最も低い国々に不釣り合いな影響を及ぼすのです。約1.5℃の温暖化は、2030年までにさらに1億2200万人を極度の貧困に追いやる可能性があります。世界中で繰り返し叫ばれている気候正義(Climate Justice)は、国際的なアジェンダとしてますます認知されつつあります。
COP28に期待するものとは
安定した気候と地球の健康は、労働からジェンダー、食料安全保障、貧困撲滅など、さまざまな分野における持続可能な開発目標(SDGs)の達成に不可欠な条件です。COP28では、成功のための多くの決定要因が取り上げられる。ここでは、注目すべき3つの要素を紹介します。
金融
金融は気候変動対策の鍵となります。適応、緩和、そして持続可能な開発の努力は、適切かつ革新的な資金によって支えられなければなりません。これを支えるためには、パリ協定とグリーン・トランジションを達成するために、目的に合ったグローバルな金融アーキテクチャーを構築する必要があります。
世界がパリ協定の目標を達成し、持続可能な開発を達成するためには、資金を急速に拡大することが不可欠です。NDCはその出発点であり、持続可能な開発も推進する、国家主導の気候変動対策へのユニークな投資展望を提供するものだからです。
気候正義
COP28において、国際社会は、気候正義の必要性を認識し、気候変動による損失や損害に対応するための新たな資金援助の運用化を優先的に進めようとしています。COP27での交渉の進展を受け、気候変動による被害に対処する国々に資金的・技術的支援を提供するための専用基金が準備されているのです。
もうひとつの重要な優先課題は、若者や最前線のコミュニティ、先住民、社会から疎外されたグループに積極的に気候変動とのたたかいに参加してもらい、エンパワーされることです。特に若者は、持続可能な未来、つまり彼らの未来に向けた行動を推進するために、必要不可欠な洞察力、エネルギー、緊急性をもたらしてくれるでしょう。
すべての人にエネルギーを
私たちは皆、SDGの目標7に示されているように、環境を破壊しないクリーンで信頼できる安価なエネルギーを必要としています。しかしながら、2021年には、6億7,500万人が未だに電気にアクセスできず、23億人がクリーンな調理用燃料や技術にアクセスできていないのです。
グリーンで公正なエネルギー転換は重要な課題であり、COP28では「化石燃料の段階的廃止」が火種となるでしょう。UNDPは、化石燃料補助金に毎年何十億ドルも費やされている資金を、クリーンエネルギーや持続可能性と公平性を促進する社会プログラムに切り替えるよう提唱しています。
再生可能エネルギーによる解決策と投資が中心的な役割を果たすことになります。アフリカ大陸の21カ国で展開されているアフリカ・ミニグリッド・プログラム(Africa Minigrids Programme:略称AMP)は、クリーンで効率的な方法で電化を促進し、最も必要としている人々に電化を届ける好例です。
より豊かで環境に優しい #未来は可能 #FutureIsPossible
気候変動に関する目標を達成するには「あらゆる面で」さらなる取り組みが必要であり、それに住みやすい未来か否かがかかっています。
世界的な協力を促進し、できるだけ多くの国からのコミットメントを確保することは、効果的な気候変動対策を追求する上で、選択肢ではなく、必要なことです。この文脈において、パリ協定の第6条は、各国が協力して共に前進するための枠組みを提供しているでしょう。
すでに多くのことが起きています。エネルギー転換技術に対する世界の投資は、2022年に1兆3,000億米ドルに達し、過去最高を記録しました。同年、各国はプラスチック汚染をなくすための法的拘束力のある国際条約を策定する歴史的な決議を採択しました。
UNDPでは、パリ協定の達成に向け、自らの役割を果たすことを約束します。私たちは「気候の約束 (Climate Promise)」を通じて、120を超える国や地域と協力し、気候に関する野心を高め、気候に関する目標を達成できるよう支援しています。また、Greening UNDP Moonshotイニシアチブの開始以来、年間排出量を二酸化炭素換算で2,800トン削減し、電力関連の二酸化炭素排出量を13.2%削減しました。
世界が気候変動の重大な転換点に近づいている今、具体的な行動は壮大な願望よりも遥かに多くを語るでしょう。国連事務総長の言葉を借りれば、「もうためらわない。もう言い訳はしない。他人が先に動くのを待つのはもうやめよう」。
COP28と、より良い明日を創るために行われている活動について、広く伝えてください。
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