岐路に立つ南スーダン〜世界で最も新しい国〜

野田章子 国連事務次長補兼UNDP危機局長

2024年7月8日
Man with South Sudan flag painted on face
Photo: UNDP South Sudan/Silvia Mantilla

南スーダン初の独立記念日は、大きな希望に満ちていました。人々が通りで歓声を上げ、国の新しい旗を高々と振っていたのを覚えています。独立から13年が経ちますが、今日に至るまで、南スーダンは世界で最も若い国家です。しかし、黎明期であるにもかかわらず、この国はすでに深刻な課題に直面しているのです。

今日の南スーダンの重要課題は、驚異的な規模の人道危機です。国の人口1,240万人のうち700万人が今年、危機的なレベルの飢餓に陥ると予測されており、900万人が人道支援を切実に必要としています。事態は筆舌に尽くしがたいほど深刻です。

10人に1人は電気が使えず、70%は基本的な医療を受けることができません。大多数の人々はこうした基本的人権がない状態で生活しているのです。

今年3月に南スーダンを訪れたとき、私はこのような状態を目の当たりにしました。マラカルのトランジットセンターでは、紛争によって家を追われた女性や子どもたち(中にはこんな状況が人生で二度目という人もいました)に出会いました。何も持たず、援助に完全に頼っていた彼女たちの苦境は、いまも私の脳裏を離れません。

人道支援だけでは南スーダンが直面している複雑な問題を解決することはできません。自立、平和、そして持続可能な開発の土台を築く包括的なアプローチが求められているのです。

建国13年を迎えた南スーダンは、国家建設の過程において極めて重要な局面を迎えています。

憲法制定プロセスが進行し、選挙が目前に迫る中、私たちの今の取り組みは、今後何世代にもわたってこの国の軌跡を形作ることになります。制度を強化し、社会の安定を育み、進歩と繁栄への原動力である若者に力を与えなくてはならないのです。

そのためには、紛争、避難、気候変動の影響で脆弱な立場に陥り、不当に大きな課題に直面している女性と女児のエンパワーメントが重要です。ジェンダーに基づく暴力、児童婚、妊婦死亡率は驚くほど高く、女性と女児の権利と尊厳を守る取り組みが緊急に必要であることを強く物語っています。

私がマラカルで出会った若い女性たちは、身の危険を感じたり、希望や願望を口に出せなかったり、仕事の機会を与えられなかったりと、日常的に直面している壁について説明してくれました。

このようなことがあってはなりません。

現地で活動する私たちのチームは、南スーダンの女性と女児の生活を改善するために懸命に働いています。私は、UNDPの支援を受け、女性に対する暴力へ対処するためにジュバに設置された裁判所に感銘を受けました。また、UNDPは平和構築プロセスへの女性の参画を保障し、ジェンダー平等を促進し、女性と若者が活躍できる機会を創出することにも取り組んでいます。

しかし、まだまだ課題は山積みです。

人口の75%を占める若者は、南スーダンの最大の課題であると同時に、最も有望な資産でもあります。若者への投資をおろそかにすることは、国の未来そのものをおろそかにすることに等しいのです。このようなことは絶対に避けなければなりません。

若者たちの声に耳を傾け、希望を育み、可能性を解き放たなければならないのです。

南スーダンは岐路に立たされています。

適切な支援があれば、南スーダンは希望に満ちた未来、より豊かな繁栄、そしてすべての人に安定をもたらす可能性を秘めています。しかし、そうでなければ、すでに深刻で長期化している危機がさらに深まることになるででしょう。

南スーダンは単独で道を切り拓くことはできません。この国が直面する無数の課題を克服するためには、国際社会の支援が必要です。危機の連鎖を断ち切り、より安全で、より安定した、より強靭で、より持続可能な生活を築く助けになるような開発支援の強化が緊急に求められています。

私は10年後にまた南スーダンを訪れたいと思います。マラカルのトランジットセンターで出会った家族が平和に定住し、子どもたちが成長し、健康で、安定した収入を得て、必要なサービスを利用できるようになっていることを心から願っています。

南スーダンでのSDGs実現は長い道のりですが、UNDPは今後も日本政府などと協力し、南スーダン人によりそった支援を継続していきます。